ケーララ

On 2012/02/13 by 大野 遼

ケーララはインドの南西、アラビア海に面した細長い州です。
古くは交易拠点として栄え、ローマ帝国とも交易がありました。
温暖な気候のためか、いわゆる「インド」と聞いて思い浮かべられる混沌とした世界とは趣の異なる、穏やかな南国です。
人々は基本的におせっかい。あまり人の話を聞かないのが、玉に瑕ですが……。

 ヒンドゥーだけではなくムスリムやキリスト教徒も多く、概ね平和に共存しています。
宗教間の対立は、普通に生活する分には感じません。
ヒンドゥーであっても、クリスマスにはキリスト教の友だちにくっついて教会に行ってみたり、
ムスリムやクリスチャンであっても、ヒンドゥーのお祭りオーナム祭には参加するようです。

 インドにいるというと、「インド語?」と聞かれることが多いのですが、
紙幣に記されているだけでも15言語あるというのは有名な話。
一般的に公用語と思われているのはヒンディー語ですが、南部諸州の反発もあり、実際の公用語は英語で、
ヒンディー語は「準公用語」の扱いです。
もっとも州ごとに公用語があり、ヒンディー語も英語も話せない人口は相当数に上ると考えられます。
一般的に、異なる州出身のインド人どうしの会話は英語でなされるようです。私がオーストラリアの学生寮にいた時も、
インド人たちはお互いに英語で会話していました。

 ケーララ州の公用語はマラヤーラム語です。
上で「南部諸州の反発」と書きましたが、インドの北部はインド・ヨーロッパ語族の言語、
南部ではドラヴィダ系の言語が話されていることがその理由です。
北部の人間に比べ、南部の人間にはヒンディー語は習得しづらく、
また、南部では北インド人やその文化を「侵略者」とみなす動きもあります。
マラヤーラム語は、元々お隣タミル・ナードゥ州の一方言でしたが、500年~1000年前頃に分離したと言われています。
タミル語に比べてサンスクリット語彙が非常に多いのが特徴ですが、
語彙もカーストや地域、宗教によって少しずつ異なるということです。

 ケーララ人は、「マラヤーラム語は非常に難しい言語だ」と口を揃えます。(日本人みたいですね。)
理由の一つは、かの有名なマハートマ・ガンディーがそのように言及したからということもあるようなのですが、
口語と文語の乖離もまた大きな要因であるようです。
ケーララ人であっても、マラヤーラム語の授業は本当に難しくて、テストで点が取れない、という話はしばしば耳にします。
あるレベル以上の高等教育は全て英語になってしまうこともあり、
ヒンディー語や英語媒介の学校に通った人でなくても、公的な文章をマラヤーラム語で書くことには自信が無いとのことです。

 それでも、マラヤーラム語は世界中にちらばるマラヤーリ(ケーララ人)たちのアイデンティティを構成する重要な要素であることに変わりはありません。
町ではマラヤーラム語しか話せない人の方が多く、映画産業はもちろんマラヤーラム映画が中心。
テレビではヒンディー映画の俳優もヨーロッパ人も、みんなマラヤーラム語を話しています(吹き替えで)。
バスの行き先なども、マラヤーラム語でしか書いていません。
外国人は基本的にマラヤーラム語を話さないので、少しでも話すと非常に感心され、面白がられます。
マラヤーラム文学の歴史や、共産党政権の長かった人々の政治意識なども、中々興味深いものがあるのですが、
長くなってしまったので、またの機会に。

佐藤友美 2012/2/13

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